【博士の育毛診療日誌】ダイエットだけじゃない、女性の薄毛・抜け毛の原因
遺伝的な原因による女性型脱毛症
脱毛の原因はダイエットだけではない?
Sさんの髪は、昨年の秋頃から抜け毛が増え、ボリュームがなくなってしまいました。Sさんの話によれば、夏場に行ったダイエットにより1ヶ月で5kgの減量をしたとのこと。血液検査をしても異常が見られなかったため、ダイエットによる休止期脱毛症の疑いがありました。急に体重を減らすような激しいダイエットを行った後は、2~3ヶ月で脱毛が起きます。さらにSさんのケースでは、秋に見られる抜け毛も重なっていたための脱毛と見られました。
しかし、Sさんの頭皮をマイクロスコープで観察してみると、後頭部と比較して頭頂部の軟毛化が顕著であることがわかりました。毛髪が細く柔らかくなる軟毛化は、ダイエットが原因の脱毛では見られないものです。また通常、頭頂部の毛髪は9対1の割合で太い髪の毛が多いのですが、Sさんの頭頂部は大半が軟毛化していました。
さらに、Sさんのケースでは前頭部左右の生え際である角額もかなり後退していました。頭頂部の軟毛化と角額の後退から総合的に考え、遺伝性の薄毛体質による女性型脱毛症という診断になりました。
ダイエットが遺伝的脱毛を加速
Sさんの場合、夏に行った急激なダイエットの影響がまったくなかったわけではありません。遺伝による薄毛体質であったことに加えて、ダイエットによる栄養不足が加わったため、頭髪の軟毛化が進んでしまったものと考えられます。
その後、すでにダイエットをやめていたSさんは、抜け毛も減っていき、回復傾向にありました。処方した育毛剤の効果もあって細くなっていた髪もだんだんと太くなっており、今のところはこれ以上脱毛が悪化することはないと思われます。
まとめ
今回のSさんのような遺伝的要素を持っている方は、激しいダイエットなどによる栄養不足で脱毛が進行する場合もあります。ダイエットの方法には、くれぐれも注意していただきたいものです。
シャーレ内での毛包細胞培養に成功後、各種育毛剤を開発する。皮膚科部長を務めた高知赤十字病院時代は日本でも珍しい「育毛外来」を開設。現在は桑名皮フ科院長。日本医学育毛協会理事、日本臨床毛髪学会評議員。