2017.07.12

【博士の育毛診療日誌】広範囲の円形脱毛症・・・諦めるのはまだ早い!?

【博士の育毛診療日誌】広範囲の円形脱毛症・・・諦めるのはまだ早い!?

全頭型の円形脱毛症 年齢:57歳  性別:女性

原因は自己免疫疾患

細い毛が生えては抜けるを繰り返し、4年間で全頭の毛髪がすっかり抜け落ちてしまったMさん。日常はウィッグをかぶっておられるそうで、大変不自由な生活を強いられているご様子でした。

頭髪全体が脱落していましたが、眉毛・腋毛などの体毛は保たれており、全頭型の円形脱毛症であることが判明。恐らく遺伝的素因により免疫機能が過剰に働き、体内にあるリンパ球が髪をつくる毛母細胞を異物と誤認して破壊してしまったのです。

このように円形脱毛症は”自分のリンパ球が自分の体の一部を破壊してしまう自己免疫疾患のひとつ“といわれ、自然治癒する場合もありますが、逆に悪化して全身の毛が抜けることもあります。

ステロイド剤と育毛剤を併用により健全な髪が発毛!

そこで円形脱毛症の確立された治療法として、副腎皮質ホルモン、いわゆるステロイド剤の外用を1年ほど実施。さらに、抜け毛がなくなって少し生えか かってきた回復期に、毛根に栄養を与える意味である育毛剤を併用していただきました。ステロイド剤の長期使用は副作用が懸念されますが、お渡しした育毛剤はその心配がないため継続して使用することができます。

Mさんは何とか髪を取り戻そうと、毎日お渡しした育毛剤を使っておられたそうです。その結果、4年10カ月後には健全な発毛が見られ、今では写真のように黒々とした髪が生えています。

治療開始前のMさんの毛髪には、白髪が混ざっていました。しかし、生えてきた髪はご覧のように真っ黒です。因果関係ははっきりしませんが、これは、毛母細胞の回復によって、髪の色をつくる色素細胞も復活したためではないかと思われます。

豊かな髪を取り戻されたMさんは大変喜んでおられました。

育毛専門医 桑名博士
1954年高知県生まれ。名古屋大学医学部卒。医学博士。
シャーレ内での毛包細胞培養に成功後、各種育毛剤を開発する。皮膚科部長を務めた高知赤十字病院時代は日本でも珍しい「育毛外来」を開設。現在は桑名皮フ科院長。日本医学育毛協会理事、日本臨床毛髪学会評議員。