2018.06.13

【博士の育毛診療日誌】脱毛を引き起こすダイエットによる鉄欠乏

【博士の育毛診療日誌】脱毛を引き起こすダイエットによる鉄欠乏

鉄欠乏症による脱毛  年齢:45歳  性別:女性


「抜け毛が増えた」と来院されたSさん。思い当たる原因はないとおっしゃるので問診をしてみたところ、糖尿病対策のために、この2年間で10 ㎏のダイエットを行い、とくにここ6カ月で4㎏も体重を減らしたとおっしゃいました。

そこで血液検査をしたところ、正常は50~160/dlの範囲である血清鉄が29/dlしかないことが判明。体内で鉄を抱え込む働きをする“フェリチン”というたんぱく質の数値も低下していることがわかりました。また、通常の女性型脱毛症とは違って髪を引っ張ると容易に抜けることからも、ダイエットで鉄およびフェリチンが欠乏したことによる休止期脱毛と診断しました。

貧血などの自覚症状がなくても鉄欠乏が起こり、それが原因で脱毛を起こす

一般に、女性は月経等の生理現象により、男性よりも多く鉄が体外に排出される傾向にあります。さらに、ダイエットなどで栄養不足に陥ると、鉄はますます不足します。当院に来られたとき、Sさんはすでに3週間前にダイエットを中止しておられたのですが、念のため内科をご紹介し、鉄分の補充をおすすめしました。今後、医薬品などできちんと鉄分を補充すれば、脱毛は軽快するものと思われます。

今回の症例のように、普通の抜け毛と思っていても、病院で検査を受けることで、内科的な病気や症状が発覚することは多々あります。Sさんも、抜け毛の原因が鉄欠乏とわかり、大変驚いておられました。立ちくらみなど、鉄欠乏による貧血の自覚症状がなかったのでなおのことです。

先に申し上げたフェリチンが不足すると、貧血などの自覚症状がなくても鉄欠乏が起こり、それが原因で脱毛を起こすといわれています。原因不明の脱毛があったら、まずは皮膚科を受診されることをおすすめします。

育毛専門医 桑名博士
1954年高知県生まれ。名古屋大学医学部卒。医学博士。
シャーレ内での毛包細胞培養に成功後、各種育毛剤を開発する。皮膚科部長を務めた高知赤十字病院時代は日本でも珍しい「育毛外来」を開設。現在は桑名皮フ科院長。日本医学育毛協会理事、日本臨床毛髪学会評議員。