2018.01.24

【博士の育毛診療日誌】ヘアスタイルが招いた脱毛症

【博士の育毛診療日誌】ヘアスタイルが招いた脱毛症

牽引性(けんいんせい)脱毛症 年齢:40歳  性別:女性

 治療開始前の頭頂部 
いつも頭頂部をゴムできつく縛る髪型をされています。
強く引っ張られている頭頂部を中心に、毛髪の本数が減少しています。

脱毛要因は見受けられなかったが・・・

まだお若いにもかかわらず、頭頂部の薄毛を訴え、当院を受診されたYさん。脱毛の原因となるような内服薬は使用されておらず、血液検査でも甲状腺ホルモンや亜鉛、鉄の異常、および膠原病といった脱毛要因は見受けられませんでした。

受診時、髪を結んでおられたので尋ねてみると、数年前から後方できつく縛るヘアス
タイルにしておられるとのこと。マイクロスコープで観察してみると、毛髪の軟毛化が見られ、頭頂部の強く引っ張られている部分を中心に、毛髪密度が低下しているのがわかりました。

毛髪の軟毛化は遺伝的なものと思われますが、頭頂部の毛髪密度の低下は、髪を長期間引っ張っていることによる「牽引性脱毛症」と考えられます。
そもそも毛髪は引っ張る力や圧迫に弱いので、長期間その状態が続くと髪が抜け、慢性休止期脱毛症となってしまいます。しかし、牽引や圧迫をやめれば脱毛は止まり、元に戻ります。

髪のことを考えたヘアスタイルをしていただきたい

そこで、ショートカットや、ゴムをゆるめにして髪をきつく縛らないなどの髪型をおすすめしましたが、Yさんは気が進まないご様子です。
髪型は個人の好みですし、ましてや女性ならではのこだわりもあるでしょう。しかし、このまま同じ髪型を続けていけば、10年、20年先にはますます脱毛が進み、元に戻らなくなる可能性もあります。

頭皮と髪に栄養を与えるため『リリィジュ』を処方しましたが、脱毛の原因である髪型を変えないことには大幅な改善は難しい状態です。
個性や美意識も大切ですが、できれば長い目で見て、髪のことを考えたヘアスタイルをしていただきたいものです。

育毛専門医 桑名博士
1954年高知県生まれ。名古屋大学医学部卒。医学博士。
シャーレ内での毛包細胞培養に成功後、各種育毛剤を開発する。皮膚科部長を務めた高知赤十字病院時代は日本でも珍しい「育毛外来」を開設。現在は桑名皮フ科院長。日本医学育毛協会理事、日本臨床毛髪学会評議員。