2018.03.21

【博士の育毛診療日誌】知っておきたい「甲状腺疾患による脱毛症」

【博士の育毛診療日誌】知っておきたい「甲状腺疾患による脱毛症」

甲状腺疾患による脱毛症

■甲状腺とは
喉ぼとけの下にあり、蝶が羽根を広げたような形で、気管を抱くようにくっついている臓器です。体の新陳代謝を促す甲状腺ホルモンを分泌する役割があります。

今回は、女性の皆さんに知っておいていただきたい「甲状腺疾患による脱毛症」についてお話しします。

甲状腺疾患とは、甲状腺ホルモンの分泌異常によって引き起こされる症状の総称で、女性に多い症状のひとつです。甲状腺ホルモンは、全身の細胞に作用して、細胞の代謝率を上昇させる働きをもっています。当然、毛髪をつくる細胞にも作用しています。

甲状腺疾患には、甲状腺ホルモンの分泌過剰による「甲状腺機能亢進症」や、分泌の低下による「甲状腺機能低下症」などがあります。いずれでも脱毛は起こりますが、機能低下症の方が脱毛の程度が強く、頻度も高いようです。

ただ、こうした脱毛は、内科でのホルモン治療で改善されるため、重度の脱毛に至ることは少ないようです。今まで4千人近い患者さんを診察していますが、「甲状腺ホルモン異常による明らかな脱毛」の例はほとんどありません。抜け毛が増えたという患者さんには血液検査を行い、甲状腺疾患の疑いがあれば、すぐに内科で治療を行っていただくからです。

甲状腺ホルモンの量は、内科で簡単に測れるので、もし原因不明の脱毛がある場合には、測定しておいた方がいいでしょう。甲状腺疾患による脱毛の場合、治療でホルモン値を正常にすれば脱毛症は治癒します。

その際には、弱った毛根に栄養を与えるために、育毛剤をお使いになるのも有効かと思います。
※1 主にバセドウ病が原因で起こる。甲状腺ホルモンの分泌過剰により新陳代謝が活発になりすぎ、心臓などさまざまな臓器に負担がかかる。
※2 主に橋本病が原因で起こる。甲状腺ホルモンの分泌低下により新陳代謝が低下し、体力・気力が低下、顔や体のむくみや体重増加などの症状が出る人によって症状の出方はさまざまである。

育毛専門医 桑名博士
1954年高知県生まれ。名古屋大学医学部卒。医学博士。
シャーレ内での毛包細胞培養に成功後、各種育毛剤を開発する。皮膚科部長を務めた高知赤十字病院時代は日本でも珍しい「育毛外来」を開設。現在は桑名皮フ科院長。日本医学育毛協会理事、日本臨床毛髪学会評議員。