2018.08.08

【博士の育毛診療日誌】女性型脱毛と間違いやすい円形脱毛症

【博士の育毛診療日誌】女性型脱毛と間違いやすい円形脱毛症

全頭型円形脱毛  年齢:27歳  性別:女性

数カ月前から、抜け毛が増えたと訴えて来られたNさん。薬剤の内服やアトピー性皮膚炎などの症状もなく、軽く髪を引っ張っるだけで抜けるような脱毛もないため、最初は若年性の女性型脱毛症と考えました。
ところが マイクロスコープで観察したところ、折れ毛と頭皮に黄色い点が見られ、新たに髪が生えてきていないことが判明しました。
折れ毛は、髪がもろくなって生じるもので、黄点が見られるのは、毛が抜けてしまった毛穴から皮脂が出て黄色っぽく見えるためです。
以上のことから、円形脱毛症の全頭型であると診断。見た目の症状がそれほど顕著でなかったため、肉眼の観察のみでは判断しにくい症例でした。

円形脱毛症は、人口の1~2%に発生しています。毛髪が抜けたり、途中で折れたりするのが特徴で、円形に脱毛する「単発型」、全体的に髪が抜ける「全頭型」、頭髪以外の毛も抜ける「汎発型」などがあります。Nさんの場合は全頭型でした。

円形脱毛症は、何らかの原因によって、体内のリンパ球が毛根を攻撃してしまう「自己免疫疾患」のひとつといわれ、自然治癒する場合もありますが、逆に悪化してしまうこともあります。メカニズムは解明されていませんが、遺伝的体質という説もあります。

Nさんの場合、通常の円形脱毛症ですので、90%の確率で完治すると思われますが、脱毛が拡大する可能性もなくはありません。
そこで、血流を良くする外用剤や近赤外線療法などの治療を行いました。また、抜け毛が止まった回復期には、育毛剤が大変良く効きます。円形脱毛症は確立された治療法がありますので、急激な脱毛があれば、まずは皮膚科を受診されると良いでしょう

育毛専門医 桑名博士
1954年高知県生まれ。名古屋大学医学部卒。医学博士。
シャーレ内での毛包細胞培養に成功後、各種育毛剤を開発する。皮膚科部長を務めた高知赤十字病院時代は日本でも珍しい「育毛外来」を開設。現在は桑名皮フ科院長。日本医学育毛協会理事、日本臨床毛髪学会評議員。