【博士の育毛診療日誌】過度なヘアケアが招いた結節性裂毛症
結節性裂毛症 年齢:38歳 性別:女性
「3カ月ほど前から、右側頭部の髪にフケのような白いものが付着して取れない」。長年診療を行っていますが、Wさんが訴えてこられた髪のトラブルは、あまり前例のないものでした。
よく見ると、Wさんがおっしゃる“白いフケのようなもの”は、髪の根元にはなく毛先の方に集中しています。さらにマイクロスコープで観察すると、ほうきの先を合わせたような白点が見られ、そこから髪が裂けかかっているところもありました。
以上の所見から、結節性裂毛症と診断しました。結節性裂毛症とは、損傷毛の一種で、パーマや毛染め、ブロー、ブラッシングといった化学的・物理的な外因によって生じます。放っておくと節の部分から毛が裂けて、切れ毛や枝毛の原因になってしまいます。
髪を傷めてしまうほどのブローやブラッシングを過度に行わないことです
Wさんはセミロングで、ドライヤーを使ってのスタイリングもなさっておられるとのこと。症状が右側頭部の毛髪に集中していたのは、この部分を毎日入念にブローされていたためでしょう。熱で乾燥した髪にブラッシングの刺激を与えることで、髪が著しく損傷してしまったものと思われます。
一度生じた結節性裂毛症は治療できないため、損傷した髪をカットするしかありません。予防法としては、トリートメント剤を十分に使用して、髪を乾燥させないこと、髪を傷めてしまうほどのブローやブラッシングを過度に行わないことです。
トラブルの原因がわかったことで、Wさんもまずは一安心。今までのヘアケアを見直し、再び美しい髪を取り戻されることでしょう。
シャーレ内での毛包細胞培養に成功後、各種育毛剤を開発する。皮膚科部長を務めた高知赤十字病院時代は日本でも珍しい「育毛外来」を開設。現在は桑名皮フ科院長。日本医学育毛協会理事、日本臨床毛髪学会評議員。