【博士の育毛診療日誌】マイクロスコープ診断の確実性
女性型脱毛症 年齢:24歳 性別:女性
まだ 24 歳とお若いにもかかわらず、2年前から薄毛が目立ってきたとおっしゃるOさん。
薬剤の内服はないことから、薬剤性脱毛ではないようですし、もしかすると内科的な病因があるのかもしれません。
そこで血液検査を行ったところ、膠原病の判定基準である抗核抗体の数値が高いことが判明しました。つまり、膠原病による脱毛が疑われたわけです。
膠原病による脱毛は、循環障害や栄養障害により、毛髪の成長が阻まれて生じます。
ところが、マイクロスコープで頭皮と髪の状態を確認すると、通常なら全体の1割程度しかないはずの細い毛髪が、Oさんの場合半分以上を占めていました。
これだけ毛髪の軟毛化が顕著なのは、遺伝や加齢、不規則な生活習慣などに伴う一般的な女性型脱毛の症状です。
「頭皮を詳細に観察すること」それが、脱毛症の診断・分類に大変重要である
Oさんの脱毛の原因が病気のせいではないとわかったものの、膠原病の疑いは晴れません。専門の医療機関を紹介し、詳しく調べてもらうことにしました。その結果、膠原病の一種であるベーチェット病との診断でした。ベーチェット病は、膠原病の中でも脱毛をきたさないものですので、やはりマイクロスコープによる所見は正しいものでした。「頭皮を詳細に観察すること」。それが、脱毛症の診断・分類に大変重要であることを、改めて実感しました。
脱毛の相談に来られたことで、図らずも病気が判明したOさんは、その後ベーチェット病の治療を開始されました。
もちろん、同時に女性型脱毛症の治療として、育毛剤の外用をおすすめしたのはいうまでもありません。
シャーレ内での毛包細胞培養に成功後、各種育毛剤を開発する。皮膚科部長を務めた高知赤十字病院時代は日本でも珍しい「育毛外来」を開設。現在は桑名皮フ科院長。日本医学育毛協会理事、日本臨床毛髪学会評議員。