髪と栄養
植物が成長期にたっぷり水を欲しがるように、毛や頭皮も栄養を欲しがっています。体の内外からしっかり与えて、元気な髪を育てましょう。
まずは、髪の構造を知りましょう
◆コルテックス(毛皮質)
毛髪の80~90%を占めるコルテックスは、細い繊維状の細胞からできていて、その状態によって毛髪の太さや強さが決まります。また、メラニン色素が含まれており、髪の色を決定します。
◆メデュラ(毛髄質)
髪の中心にあるメデュラは、外的な刺激によって空洞ができやすいのが特徴です。また、メデュラの役割がよくわかっていませんが、髪の弾力や強度に関係していると考えられています。
※空洞化して軽くなることにより、鳥は空を飛びやすくなり、水鳥は空を飛びやすくなるといわれています。
◆キューティクル(毛表皮)
キューティクルとは髪の表皮を構成する組織で、魚のウロコのように重なり合っています。髪の表面にあり、水分を保持して、髪のつややなめらかさを保つ役目があります。キューティクルが損傷して指通りが悪くなると、ブラッシング時の抜け毛や切れ毛の原因になります。また、一度壊れたキューティクルは、細胞が死んでしまうため再生できません。
育毛環境づくりのキーワードはたんぱく質と適度な皮脂
髪はアミノ酸が集まったたんぱく質でできている
毛髪は、皮膚や爪と同様、ケラチンというたんぱく質からできています。このケラチンは18種類のアミノ酸が集まってできたものですが、そのうち一番多いのがシスチンという硫黄を含んだアミノ酸です。
また、シスチンは必須アミノ酸でもあり、これは体内で作りだすことができないため、食物から摂取する必要があります。
バランスの悪い食事やダイエットなどで髪がやせたり、抜け毛が増えるのはこれらのたんぱく質(アミノ酸)の不足が主な原因です。
頭皮や髪の健康には適度な皮脂も不可欠
髪の成長に必要なもののひとつに、皮脂があります。皮膚の表面を覆っている皮脂膜は、頭皮や髪の毛の水分の蒸発を抑え、うるおいを保ちます。
また有害な細菌の繁殖や浸入を防ぎ、紫外線やホコリから髪や地肌を守るバリア機能もあります。適度な皮脂は、髪にとってはなくてはならないものなのです。
一方、シャンプーなどで皮脂を取りすぎると、それを補おうと皮脂線が肥大化し、過剰に皮脂を分泌します。その結果、育毛環境が悪化し抜け毛が増える場合もあります。
※中年以降の女性では皮脂欠乏症が問題です。 一方、男性では皮脂分泌の過剰が脱毛の原因になる場合があります。
※シャンプーなどで洗い流された皮脂膜は、再生するのに約4時間かかるといわれています。朝シャンは、皮膚のバリアを失ったまま紫外線やホコリの多い環境にさらされることになるので要注意!
体に必要な栄養を体の内と外から補給しましょう
低カロリー高たんぱくの食品を意識して摂りたい
健康な髪を育てるにはアミノ酸(シスチン)を含むたんぱく質を意識して摂りたいものです。
多く含まれるのは、鶏肉、牛肉、魚肉などをはじめ、牛乳、卵、大豆製品、チーズなど。ただし、カロリー過多にならないために、肉なら脂肪の少ないものを選び、低カロリーの納豆や豆腐などを活用するといいでしょう。
また、ごまやナッツ類に含まれるビタミンEには、血液の循環をよくし、食事で摂った栄養を頭皮や髪にスムーズに届ける働きがあります。
育毛剤と頭皮マッサージで体の外から育毛促進
育毛剤による、体の外からの栄養補給も重要です。育毛剤の使用は、毎日朝晩の2回が理想的。特に頭皮への血液循環が期待できる就寝時には、育毛剤の効果が発揮されます。また、シャンプーの直後は頭皮が湿っていて育毛剤の成分が薄まるため、頭皮が乾いてから使うようにして下さい。
頭皮をやわらかくして血流をよくするマッサージをプラスすれば、育毛剤の栄養成分がより毛根に届きやすくなります。入浴中やテレビを見ているときなど、ちょっとした時間を利用して行いましょう。
シャーレ内での毛包細胞培養に成功後、各種育毛剤を開発する。皮膚科部長を務めた高知赤十字病院時代は日本でも珍しい「育毛外来」を開設。現在は桑名皮フ科院長。日本医学育毛協会理事、日本臨床毛髪学会評議員。